最終章

-これが出来たら、貴方も公邸料理人!!-

-前回までのあらすじ-

 

2年の準備期間を経て、公邸料理人に採用された私は、悪の担当官T柳氏の適当な説明を受け、採用から2週間でアフリカ赴任を命じられる。

 

関空での涙の別れ、新天地アフリカ大陸へと赴く。

25時間かけて到着したジンバブエ国ハラレ国際空港は、生ぬるく私を迎えてくれたのだった。

最近新規のお客様が多くなり、ビストロ・ゼブラについて色々と説明をする機会が増えてきました。

3年前の状況再びと言った感じですが、このコラムの最終章は、知られざる公邸料理人の毎日や業務について。

また、これからこの職業を目指される方に、こんなことが出来ればなれる!

とかメリット・デメリットを説明したいと思います。

 

ハラレ国際空港を出ると、見送りの人・旅人・乞食・暇人・病人が渦巻く難儀な有様だった。

出迎えに来てくれた派遣員のS原さんと共に、差し向けの公用車に乗り市の中心部へと向かう。

タダでさえ道が覚えられぬ頭なのに、この町ときたら建物や道が綺麗に区画整理され特徴が無い。

イギリスの統治が永かったゆえであろう。

30分程で大使公邸に到着した私を迎えてくれたのは、新田大使夫妻。

2週間ぶりの対面である。


お茶を頂、自分の部屋に案内してもらう。

2LDKと言えば良いのか、キッチンとリビングがあり寝室とあとバストイレがユニット。

いわゆる同居型バストイレね。

 

神戸加納町の私の下宿先すみれマンションとは大違い、結構広い。

ちなみにコレはガーナの宿舎。

さて、一息ついたところで業務について書いてみましょう。

手元のマニュアル、「公邸料理人の手引き」には以下のようにある。

 

公邸料理人は基本的に24時間業務で基本給以外に超過手当ては支給されない。

つまりパーティーや会食が長引いてもギャラは同じ。

 

では、在ジンバブエ&在ガーナ日本大使館での1週間の業務について説明していきたい。

他の公館については不明ですが・・・。

まず、毎日・毎食の大使夫妻の食事。

これが日々の仕事の多数を占めます。

次に大使主宰の外交団パーティー。

つまり他の国の大使を招いてのお食事会。

多い時には週に3回程度あります。

また、日系企業やJICA/JOCV関連の会食もたまにある。そして、メインの天皇誕生日。

 

他の国だと建国記念日とか独立記念日が「ナショナル・ディ」

500人位ゲストが来るので、材料の調達から仕込み・保存・仕上げと寝る間も無い忙しさです。

これをサバケないと公邸料理人になれないという大舞台。

逆にこれが出来れば怖いもの無しとも言える。

 

500人分の料理全てを一人で作る訳ではないですよ、念のため。

ある程度はケータリングを利用しますが、寿司・天ぷらなどの日本をイメージさせる料理は自分が作らねばなりません。

よってフレンチなりイタリアン、洋食の料理人も最低寿司・天ぷらは習得してから行きたいものです。

でないとしんどいです。

上記の業務を大使館によって組み合わせを決め日程を組み、料理人にスケジュール表として渡される。

気になる休業日は日曜日オンリー。

 

まぁ、日本でも一日だけですが・・・。

朝は8時頃より朝食、ランチは12時前後。

晩御飯は6時前後に用意すれば良い。

異様に健康的ですな。洗物とかはメイドがしてくれます。

 

では、其の間の時間はどうするか?

基本的に自由時間なので、寝ようが遊びに行こうが好きにすればいい。

一日の労働時間を1時間にも出来るし24時間にしてもだれも文句は言わない。

結果が伴えば良いのである、決められた業務を100%こなせれば。

 

上にも書きましたが24時間の拘束業務なので、何時でも連絡がつく必要があります。

僕の場合は、自腹でモバイルフォン(ケータイ)を買って、大使夫妻に番号を言っておきました。

大体アフリカでケータイを買うと、本体の電話機が30,000円程度。

別途シムカードと言う個体認識チップが5,000円位が必要となります。

安く買うには空港の免税店で買われる事をオススメします。

大使館は貸してくれません。けち。

モトローラやノキアがメジャーですな。

(2014年現在では価格はかなり変わってます、モトローラ・ノキアが強かった頃のお話、胸熱)

 

余暇の過ごし方ですが、自由です。

旅行へ行こうが家に居ようが。

ここで問題になるのが、自分のアシをどうするか。

 

普段の買い物には公用車が使えるのですが、大使館が忙しいと、週に何回かとか言われます。

自由に買い物には行きづらい・・

 

で、気になる現地での車のお値段ですが、ぶっちゃけメチャ高いです。

一生のうちに2・3台買い換えるのが普通の日本では考えられない程高です。

新車ですが、ざっくり計算してトヨタのカローラクラスですと3,000,000円オーバーですな。

ヤリス(ヴィツ)クラスは2,000,000円程度。

これが、フルサイズのサルーンとか四駆になると5,000,000円は軽く致します。

なんでこんなに高いのか、海運費用は知れてます。

 

それより税金が100%かかるのが問題。

中古車なんて10万キロ走ってても1,000,000円近いからアホらしいですわ。

と、書きましたが、我々外国人は、半年の猶予があるとの但し書き付きですが、免税枠で買うことが出来ます。

つまり半値で買えるっちゅー事です。

だから大体日本での価格に一割足した位で買えます。

安心しましたか?

でもね、現金一括払いのみ、ローンは不可。

金利手数料はジャパネットが負担!!に慣れている我々には、ビックリの殿様商売と言える。

 

どうですか? 料理人さん方?

つまり赴任時に最低1,000,000円程度の自己資金が無いと車が買えない、という事になります。(数ヶ月貯める手も有り) 

しかも、本省からいつ帰国命令がでるかも知れず・買ったは良いが半年で帰国・・になるとエライ損。

しかも売る相手は自分で探さないといけません。

後任の料理人が買ってくれるかどうかは、懐次第。

 

更に、売る相手は外交団限定。一般人に売る場合には別途税金がかかります。

どうだ!! ややこしいでしょ?

 

まぁ、逆を言えば外交団から中古車を買えば、格安で手に入るチャンスもあり。

情報は大使館の職員さんが、いくらでも持ってます。

ただ、程度が良いので値段もイイ!!

ちなみに、ジンバブエでは新車。

ガーナでは前の日本大使・私用車を買いました。

タクシーは危険なので止めたほうが無難です。

レンタカーは割高。

どうですか?意外とお金がいるでしょ?

私用車があると無いとでは生活の質が全然違ってきます。

ただコストが高いのが難点。

後、パソコンが必要です。必ず必要です。

 

国際電話は高いですよ、家や彼女との連絡はEメールなのは常識!!

プロバイダは、アフリカに限ればアフリカオンラインという会社が最大手で、ほぼアフリカ大陸を網羅しています。

(2014年現在ではプロバイダや電話会社が増えてスマホも普及しています)

申込はもちろん英語です、頑張ってください。

事務所に言ってノートパソコン渡して「セットアッププリーズ」と言えば大体分かってくれます。

ウィンドウズのアイコンは世界共通なので全然問題ナシ。

ゼブラはジンバブエもガーナもこの会社でした。

 

月の使用料は、使いたい放題で5,000円程度。

ただし、電話線を使ったナローバンドですから、日本より6年は遅れてます。

ダイヤルアップです、動画は不可能、静止画はギリギリ。

Eメールは全然大丈夫。

自室に独立した電話線が無い可能性がありますので要確認。

(これは8年前のコピペです。2014年現在はWiFIルーターがメインだそうです)

 

ジンバブエとガーナの自室にはありました。いや付けけました。勝手に。時効だな。

ちなみに自室のテレビとかビデオ、その他の電化製品は外務省の備品です。

シールが張ってあるハズ。

売ってはいけません。

 

友達を沢山作ってください。

同郷意識が強くなるので、温かく受け入れてくれる人が多いです。

ストレスを溜めては長続きしませんよ。

 

散髪とか外食で気分転換するのもオススメ。

いろんな国の料理が格安で食べられ、勉強になります。

インド料理とイタリアンにハズレが少ないのが持論。

 

日本へ帰った後のビジョンを持って下さい。

楽しくなりますよ。

僻地なら僻地ほど珍しい体験を今後のネタに出来るはず。

 

自分をどうプロデュースするか、それがポイント!!

どうせなら、僻地を希望しよう! 南米・アフリカ・中近東。

危ないけれど給料は良い!!

たぶん。

 

初公開、秘密結社国際交流サービス協会の方々。

1999年時

悪のT柳氏はどこでしょうか? あえては言いませんが・・・。